「首都防衛」

久しぶりに我が家の本紹介です。そろそろ新しい本が溜まってきましたので、週1冊orシリーズくらいで紹介していきましょう。

「首都防衛」
 宮地美陽子著
 講談社刊

「防衛」と言っても軍事面の話ではなく、地震と噴火などの自然災害から首都や日本をどう守るのか?という観点での話です。特に首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山噴火の3連動災害が発生するとどうなるのか、という観点で書かれています。

実際に江戸時代にはこの3連動が発生し、それが江戸幕府の滅亡に繋がっていったのではないかという話なども書かれています。ですから、もし今の時代にこの大災害が発生してしまうとどうなるのか、そしてそこから日本を守るにはどの様な対策をしておく必要があるのか、について様々な提言がされています。

今年は元旦に能登半島地震が発生するなど、災害に対する意識が高まっているところですから、是非、興味のある人には読んで欲しい書籍です。

「人工知能に哲学を教えたら」

今日の我が家本紹介はこれです。

「人工知能に哲学を教えたら」 岡本裕一朗著、ソフトバンク・クリエイティブ刊

まさにタイトル通りの本です。もっと正確に言えば人工知能は人間同様、哲学的問題に対応させることができるのか?という話です。一番最初に「トロッコ問題」を持ってきているあたりもイメージしやすい事例から入っているという点で評価できます。

っていうかですね、哲学的な領域では人間だってキチンと答えを出せていない問題は多々あるわけで、
「哲学を理解しない人工知能は人間のように考えることはできない」
などという主張をしようものなら、盛大なブーメランになって人間にも戻って来てしまいます。

自然言語処理を人工知能にやらせるような研究をやっている身からすると、人工知能を使い物になるよう学習させる方法と、人間を学習させる(教育する)方法にあまり差はありません。
ディープラーニングは確率で判断するような学習をさせるわけですが、それは人間だって脳内で無意識のうちに確率を考えて判断してるからなぁ…

哲学の中の倫理学領域で言えば
「倫理的ではない行動」
と判断する内容は人によって異なるし、それは生まれてからの学習の結果なので、そのような判断を下すようにチョイスしたデータで学習させた人工知能と変わらんのだよなぁ。

「日本語の「常識」を問う」

今日の我が家本紹介はこれです。

「日本語の「常識」を問う」 鈴木貞美著、平凡社刊

日本の歴史を古代から辿りながら、日本語というものの変遷を語り、その特徴だと言われているものがどの様にして現れてきたのかなどを解説しています。中国語との関係や、西欧言語との比較なども行われているので、結構面白い。

そして高校で学ぶ漢文は「現代においては国語ではない」としながらも、日本の長い歴史の中では公文書に使われてきたこともあり、その当時には「国語と呼んでも差し支えない」ものだったともしています。うん、そういう意味ではそうだね。

ちなみに今でこそ日本では「日本語」のみが公用語(=国語)となっていますが、同化政策がとられる前はそうじゃなかった。そして公用語を4つも持っているスイスや、公用語以外に準公用語や、地方公用語を持つインドなど、様々なケースを紹介してくれているのも良いですね。

「FOOTPRINTS」

今日の我が家本紹介はこれです。

「FOOTPRINTS」 デイビッド・ファリアー著、東洋経済新報社刊

人新世と呼ばれるようになった今の時代。未来から見たらどんな物が残るのかについて書かれています。第1章は道路。続いて都市、プラスチック、氷床コアへの影響、珊瑚礁の破壊、核廃棄物、生物多様性の消滅、微生物の攪乱と続きます。

正直、プラスチックが化石として残るには数百万年以上、少なくとも地層に示準化石として残るには10万年以上の時間が欲しいわけですが、都市や道路はそんなに長いこと残るでしょうか。さすがにキビシイ。

一方、大量絶滅や珊瑚礁の破壊、核廃棄物なんかはかなり長いこと「あしあと」として残ります。氷床コアを採集した際に大気中の二酸化炭素濃度が高かったというのも分かるでしょうね。

1000万年くらい経って、その時に何らかの知的生命体が地球にいたとしたら、その生命体は大量絶滅の原因を二酸化炭素濃度の上昇に求めるかも知れませんが、その裏にあった事情を理解できるかどうかですね。まぁ、人類の化石も発見されるでしょうから、その辺りから推測するのかも知れませんが…

地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち」

今日の我が家本紹介はこれです。

「地図とデータでみる都道府県と市町村の成り立ち」 齊藤忠光著、平凡社刊

廃藩置県からこっち、都道府県というのがどの様に設置され、統合され、廃止されたのがまた復活し…という形で今の状態になったのかを紹介してくれています。この辺、結構面白い。大規模な市町村合併も扱われていますし、待ちの成り立ちというか、地域の成り立ちを知る上では避けて通れない情報が手に入るのはありがたいものです。

ただなぁ…思ってたのとはちょっと違う。もう少し地域毎の人口の変遷とかその他の情報がデータとして出てくるのかと思いきや、データの方は拍子抜けするような内容なんだよなぁ…新書ごときにそこまでの情報を期待するなということか。

「都市緑化新世紀」

今日の我が家本紹介はこれです。

「都市緑化新世紀」 江刺洋司著、平凡社刊

仕事の一環で購入した本です。ただし2000年に出た本ですので、現状に合うものと合わないものが混在している感じにはなっていますが、概ね取り入れても問題ない内容になっています。

基本的には街路樹をどのように上手く活用するのか、そして公園をどの様に整備するのか、が中心になっています。透水性の高い道路にしないとダメだとか、緑の回廊を上手く構成するような配置が必要だという提言がされています。

残念ながら屋上緑化や壁面緑化については
「そういうのもあるかもしれない」
という程度にしか触れられておらず、その辺は20年以上前の本なので仕方が無い気がします。

「貧乏国ニッポン」

今日の我が家本紹介はこれです。

「貧乏国ニッポン」 加谷珪一著、幻冬舎刊

「失われた30年」になってしまいましたが、特にこの10年ほどはひどかった。前にも書きましたが、平均賃金で韓国にまで抜かれてしまいました。またビッグマック指数でも2010年にはアメリカ、オーストラリア、イギリスとほぼ同じだったにもかかわらず、2021年では日本の390円に対し、アメリカ621円、オーストラリア527円、イギリス522円ですからものすごく物価が安いことが分かります。

「安いことは良いことだ」

と思うかも知れませんが、日本の給料ではアメリカでビッグマックを買おうとするととんでもない金額になるということを意味しています。ちなみに韓国は440円、シンガポール474円なので、海外旅行をすると日本より遙かに高い金額を出さないと食事が取れないことを意味します。

もしビッグマックを同じ値段での提供にしようと思った場合、1ドルは69円でなければいけません。だからドルベースで計算される物の価格は、1ドルが114円くらいである現時点ではものすごく割高になっています。円安誘導された結果、この10年で日本人は一気に貧しくなったわけです。

これがiPhoneが10万円以上し、自動車が200万円オーバーになっている理由でしょう。もし今の為替レートであるならば、日本人の平均年収は440万円ではなく730万円くらいでなければいけないことになります。給料を上げずに来たツケが今の状況だということですね。

「戦艦大和の収支決算報告」

今日の我が家本紹介はこれです。

「戦艦大和の収支決算報告」 青山誠著、彩図社刊

戦艦大和をお金の中心に語る書籍です。もちろん当時の金額と今の金額では物価が何桁も異なりますのでそのままだとわかりにくいのですが、当時の初任給や月給の額が入っているため、そこから想定することができるような工夫もされています。また当時の為替レートもありますので、日本と米国の建造費用の比較なんかもできます。

まぁ、結局の所、赤字なのか黒字なのかは特に語られないのですが、単体で見れば大赤字なのは間違いないでしょう。とはいえランドマークプロジェクト、今で言うところのムーンショット型プロジェクトだったことは間違いありません。大和で培われた様々な技術が戦後のもの作りに活かされていくことになりますから。アメリカで言えばアポロ計画と同じです。あれば確か今の価値に直せば13~14兆円くらいかかっていたはずです。つまり人間一人を月に送るのに1.1兆円以上かかっていた計算ですから単体としては大赤字です。しかしその派生技術が様々な利益を生み出しました。大和もそういう物だと思うしかないのかも知れません。